サービス産業の生産性向上や効率化に関する記事を時々見かける。「労働生産性が低い」「労働生産性が米国の約半分」「生産性向上のためにIT投資を」などだ。改革が求められる中、ある宿泊施設で3年ほど前から営業の効率化を図っている。
ネット販売だけに依存するのではなく、従来の営業にもITを取り入れ、旅行会社から団体を含む宿泊客の獲得を目指している。営業専任者はいないので、内勤者が閑散期を活用し営業にいく。営業に充当できる日数が少ないので無駄のない動きが求められる。
活用するのはこの二つ。「グーグルアナリティクス」と「在庫共有ソフト」だ。この二つのソフトは、予約管理者が普段活用するが、営業で必要なのは一部の情報だけで良い。
グーグルアナリティクスを用いて、宿泊施設のホームページへのアクセス数を見る。どの地域からのアクセスが多いか都道府県別の統計をとる。宿泊者の住所を県別に整理したデータを活用するのと目的は同じだが、ホームページへのアクセス数で宿泊施設に興味を抱く潜在顧客数を知ることができる。
さらに在庫共有ソフトを用いて、旅行会社販売店別の送客数を見る。予約担当者が送客数データを常日頃から整理していればそのデータを活用できる。二つのソフトを活用すれば、数回のボタン操作で、営業に役立つ情報を得ることができる。
調べた情報を元に、潜在顧客の多い地域で営業を行う。過去に予約実績がある旅行会社を訪問し、直接のコミュニケーションを図る。旅行会社担当者が持つお客さまの感想や有益な情報を得られることもある。ITで整理された情報を活用し、人と人とのつながりや信頼関係を築いていく。
この試みを始めてから、この宿泊施設は宿泊者数および売り上げが3年連続増加している。効率化の成果は、常に市場のニーズを細かく読む努力をする先にある。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員 株式会社プロセスアンドソリューション、大谷健)